あついっ!やけどを負ってしまったら

この記事は2018年4月27日に更新されたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

大なり小なり、やけどになってしまった経験のある方は多いと思います。仕事やお料理など、日々生活をしていると、いろいろな場面でやけどになってしまう危険は潜んでいるものです。小さなお子さんにとっても、やけどはいつ起きるかわからない、けれどいつ起きてもおかしくない恐ろしいアクシデントと言えるでしょう。今回は、やけどになってしまった時の適切な対応法とやけどから身を守るための対策について考えてみたいと思います。

目次

ほとんどのやけどは家庭で起きる

ママにとって、たとえ忙しくても家事は待ったなし!時には赤ちゃんを抱っこしたままキッチンで調理をしたり、おっぱいをあげながら自分も食事をとったり・・・という状況もあり得ると思います。お子さんの方も、少し動けるようになって行動範囲が広がってきたら身の回りのいろいろなものに興味津々で隙あらば何でもつかんだり触ったりしてしまいがち。半面、危険に対する回避能力はもちろんまだ備わっていないので、身近にある様々なものが凶器となってしまう可能性があります。実際、小さなお子さんのやけどは8割以上が家庭内で起きているという統計があり、原因としてはみそ汁や麺類、シチューなどの食品やストーブ、電気ポットや電気ケトル、炊飯器やアイロンが上位を占めています。
万が一やけどを負ってしまったら、どうしたらいいのでしょうか?結論を言うと、やけどの場合にも前回ご説明した「湿潤療法(うるおい療法)」がとっても効果を発揮してくれるのです!湿潤療法の原則は、「キズをよく洗う」「キズに消毒はしない」「キズを乾燥させない」でした。基本的には、やけども変わりません。やけどに、消毒をしたりしみて痛い軟膏を塗る必要はないのです。

やけどをしたら、とにかくまずは冷やす

やけどを負ってしまったら、まず最初のステップはとにかく冷やす!当たり前ですが、冷やすのが大原則です。家庭内であれば、洗面所やシャワーでジャーっと水をかけましょう。どれくらいの温度でどれくらい冷やせばいいかは正直決まっていません。寒い冬場などに痛く感じるほどの冷水を浴び続ける必要はありませんので痛みが治まって気持ちいい(と親御さんが感じる)くらいの温度で水を流すとよいでしょう。
注意点としては服の上から体に熱湯を浴びてしまったとき。あわてて脱がせようとすると服の熱さで熱湯を浴びていないほかの場所までやけどを広めてしまうことになりかねませんので、まずは服の上からそのまま水を流して冷やしてください。服は冷えてからゆっくり脱がせるか、脱がしにくい場合は切ってしまいましょう。

痛みや、水ぶくれはどうすればいい?

とっても範囲の小さなやけどで痛みも強くなければ、それだけでもあとはご家庭で放っておけば治るかもしれませんが、やはりやけどしてしまったら一度は医療機関を受診して診てもらいましょう。その際には、湿潤療法を実践している病院あるいはクリニックがオススメです。やけどの痛みはその部分が空気に触れることで生じるので、受診までの間に痛みが残る場合はやけどした場所にワセリンを塗って空気を遮断するもので覆ってあげると痛みが和らぎます。空気を遮断する材料として家庭にある身近なものでは、食品用ラップなどがお手頃です。ワセリンを塗って湿潤療法の原則である「乾燥させない」、ほどよいうるおい環境を保つことにより、やけどのキズも早くきれいに治るのです。ワセリン以外の、薬品の含有された軟膏を塗る必要はありません。
水ぶくれが出来てしまったらどうすればよいでしょうか?やけどの水ぶくれは破ってはいけない!という意見もよく聞きますが、たしかに1cm程度の小さな水ぶくれであればそのまま吸収されて小さくなっていく可能性もあるため放っておいてもいいかもしれません。しかしある程度大きな水ぶくれは、破って表面をおおっている膜をすべて取り除く必要があります。理由は、膜を残すとその下にたまった水疱液がバイキンの培地となって感染を起こしてしまうからです。水ぶくれをただつぶして破るだけではダメで、きれいに膜(破れた皮)を取り除く必要があるため、やはり医療機関での処置をオススメしたいです。

やけどの痕をなるべく目立たなくするには

やけどは、深さなどの要因によって期間はケースバイケースですが徐々に新しい皮膚が出来てきて(上皮化といいます)治っていきます。以前であれば皮膚移植をしなければいけない!と言われていたようなやけどでも、湿潤療法を適切に行うことで移植などの手術なしで治っていくことがわかってきています。ただし、やけどの状態や体質によっては目立つ痕が残ってしまうこともあります。やけどの痕を目立たなくするのに重要なのは、紫外線対策と乾燥対策です。紫外線はやけどが治ったあとも数か月は浴びないほうがいいとされ、狭い範囲ならば絆創膏など、ある程度広い範囲であれば衣服などで紫外線からやけど痕を守る工夫が大切です。また上皮化したばかりの新しい皮膚は乾燥しがちなので、適度なうるおいを保ってあげることが必要です。つまり、やけどはキズとしての治療がいったん終了した後も、湿潤療法の原則を守って継続することで、より目立たなくすることが出来るのです。

まとめ

このようにやけどにも強い威力を発揮してくれる湿潤療法ですが、やけどはしないにこしたことはありません。家庭で起きるやけどは、気をつけることでほとんどが予防可能なので、お子さんをやけどから守るために大前提として重要なことは、予防に力を入れることです。赤ちゃんが泣き叫んでもどんなに忙しくても抱っこしたままキッチンで火を扱わない、熱いものは倒れにくい容器に入れて、かつテーブルの端から30cm以内に置かない、テーブルクロスを使わない、熱の残っているアイロンや使用中の炊飯器は子どもの手の届く範囲にはおかない、などのちょっとしたことで、多くのやけどは予防することが出来るのです。どのような状況でやけどを起こすような事故が起きるかを保護者の方が知っておくことで、お子さんを怖いやけどから守ってあげましょう。

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墨俣医院院長 熊崎俊樹

1977年生まれ。2007年医師免許取得。首都圏の病医院で研鑽を積み、2014年地元である岐阜に戻る。岐阜中央病院内科を経て2016年3月より墨俣医院院長に就任。墨俣医院では、赤ちゃんからお年寄りまでをモットーに一般内科・小児科、糖質制限を取り入れた生活習慣病指導、けがややけどの湿潤療法などに力を入れて診療しています。私生活では3児の父として育児もがんばっています。http://www.sunomataclinic.com

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