いたいっ!ケガをしたら、どうしよう

この記事は2018年3月16日に更新されたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

目次

1.子どものケガは日常茶飯事

小さなお子さんが公園や広場で元気に走り回る姿は見ていてほほえましく、こちらまで元気になってきます。でも、時に転んだりぶつかったり、遊具から落っこちたりしてケガをしてしまうこともありますよね。家や幼稚園・保育園の中でもついついはしゃいで椅子から落ちたり、机のかどに頭をぶつけたり・・・日常生活では、いつケガをするかわかりません。ケガをしてしまった時、どうすればいいの?病院に行った方がいいの?そもそもケガをした時って何科の医者にかかればいいの!?実はわからないことって多くありませんか?

ひとくちにケガと言っても実に様々です。骨折や脱臼ならば整形外科、内臓の損傷があれば各々の臓器外科、頭部のキズは脳神経外科・・・と大雑把に分けられますし、例えば交通事故などにあって全身に大きなケガを負ってしまった場合、初期診療は救命救急医が行なうことになるでしょう。(救命のドクターも、もとは◯◯外科出身、ということが多いのですが)

では、切りキズや擦りむきキズはどうするの?ちょっとしたキズなら家で消毒してバンソウコウでも貼っておけばいい?少しひどそうだったら整形外科?それとも皮膚科?頭を切ったけど、脳神経外科なんて近くに無いし!・・・なんて悩むことはありませんか!?

2.常識が変わった?新しいケガの治療

ひと昔前までは、転んだりしてケガをしたらおうちの人や保健の先生に消毒をぬってもらってガーゼを貼ってキズを乾かし、かさぶたができたら治った合図・・・というのが当たり前でした。ところが、これは実はケガの治療としては完全な間違いなのです。ケガをした時の大原則は「キズをよく洗う」「キズを消毒しない」「キズを乾燥させない」というたった3つ!この原則を守るだけでキズは自然に治っていくのです。このようなキズを消毒・乾燥させないケガの治療方法を湿潤療法(うるおい療法)といいます。

まず、ケガをしたらキズをよく洗ってよごれを落とすようにしましょう。砂や土などの異物がキズの中に残っていると、痛みや化膿してしまう原因になってしまいます。ちなみに洗う水は、水道水でかまいません。

3.消毒はしてはいけない!

次に、キズはなぜ消毒をしてはいけないのでしょうか?もともと消毒は、キズにバイキンがくっついて化膿するのを防ぐ目的で行われていたと思います。しかし消毒薬は、バイキンとヒトの細胞を区別することはできません。消毒をすることは、正常のヒトの細胞にもダメージを与えるということ。そのため、消毒はしみて痛いし、実はキズの治りも遅くなってしまうのです。それにたとえ消毒薬を1日1回使ってもキズ口のバイキンを24時間完全に死滅させることは不可能です。そうした理屈からも消毒することは無意味であると言えるでしょう。

でも、消毒をしないとキズが化膿してしまうのでは??実は、そんなことはないのです。そもそも「化膿」とは「バイキンの感染によってキズが炎症を起こしている状態」を指します。バイキンがいるだけでは「化膿」とは言いません。そしてバイキンはキズに砂などの異物やカサブタ、血のたまりなどが残っていると感染を起こして化膿しやすくなるのです。「赤く腫れて熱っぽくて痛い」というのが炎症を起こしているサインですので、そうした徴候がなければキズは化膿していないと考えて差し支えありません。

4.キズを乾かしてはいけない!ジュクジュクは治ってきている証拠

最後に、なぜキズは乾燥させてはいけないのでしょうか?キズができたら、人間の皮膚はキズの周りの皮膚などから新しい皮膚を形成する細胞が集まってきてキズの部分に移動し、増えていきます。キズ口に適度な水分があることで新しい細胞の移動・増殖がスムーズに行われるのです。乾燥してカピカピの状態ではせっかく新しい皮膚を作ろうと頑張るはずの細胞が移動することも増えることもできずに死んでしまいます。

ケガをしたあとキズ口がやがてジュクジュクして来るのは、実はキズの周りの組織が浸出液を分泌して、キズを早く治そうと頑張っている証拠なのです。キズのジュクジュクを見ると「化膿してるんじゃないか?」と皆さん心配されますが、先ほど述べたように赤く腫れて熱っぽくて痛いサインがなければ、それはキズの治りをはやくしてくれる良いジュクジュクなのです。

5.まとめ

動物を見ていてもわかるようにキズというものは薬や消毒に頼ることなく生物が本来持っている自己治癒能力で自然ときれいに元に戻っていくものです。余分な消毒や塗り薬は、しみて痛い上に自然な治癒を邪魔して治りを遅くしたり、きれいな治り方ではなくなってしまう可能性があります。

医学会でも長年、消毒して乾燥させるキズ治療が主流でしたが、ここ数年で湿潤療法はかなり浸透してきてもはや常識となりつつあります。切りキズや擦りむきキズに対して湿潤治療による「余分な消毒をしない」「痛くない」「きれいに治る」治療を実践している病院も増えてきました。湿潤療法は理屈や方法を学べば、ご家庭でもある程度のケガまでは対応できる治療法でもありますが、もちろん傷の種類や状態によって治療の方法はかわりますので、ケガをしてしまってお困りの場合は、まずは湿潤療法を実践している病院にご相談してみてください。

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墨俣医院院長 熊崎俊樹

1977年生まれ。2007年医師免許取得。首都圏の病医院で研鑽を積み、2014年地元である岐阜に戻る。岐阜中央病院内科を経て2016年3月より墨俣医院院長に就任。墨俣医院では、赤ちゃんからお年寄りまでをモットーに一般内科・小児科、糖質制限を取り入れた生活習慣病指導、けがややけどの湿潤療法などに力を入れて診療しています。私生活では3児の父として育児もがんばっています。http://www.sunomataclinic.com

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